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「GO」(2001年/日本)

監督:行定勲


■金城一紀の小説「GO」を宮藤官九郎脚本で映画化した作品。出演は窪塚洋介、柴崎コウ、山崎努、大竹しのぶといった人気俳優。在日韓国人の主人公の恋愛、喧嘩、進学、友情、といった青春模様を描いた話。

■原作を読んでしまっているので、大体のストーリーは分かっていたのだが、それにしても楽しめない映画であった。原作は革命的傑作と帯カバーに書かれるほどのものとは思えなかったが、まあまあ面白かった。それほど長い小説ではないので、ストーリーはほぼ原作小説そのまま映画化されている。にもかかわらず楽しめなかったのはなぜか?という点を以下ダラダラと述べる。

■高校生特有のおバカな青春に「在日」という問題が絡むのが「GO」という作品だと思うが、結論からいうと、窪塚クンの例のピースな演技でVサインしつつ「広い世界を見るのだ!」と言われてもワタシには何も伝わってこないのだ。このピースな演技の「軽さ」を「ポップ」というか「空っぽ」というかは人それぞれだと思うが、ワタシには後者に思えてしまった。「GO」という作品は青春が国籍というアイデンティティーに関わる問題とどう折り合いをつけるか、という話である。したがって主人公が恋愛をしようが、喧嘩をしようが、何をしようが、最終的には「国籍」「在日」というものに帰結してくる。アホでバカバカしい青春からシリアスな問題への転換。ここで窪塚くんのピースな演技を見せられても主人公の葛藤や成長は伝わってこない。少なくともワタシには。

■宮藤官九郎の脚本も同様で、原作のポップさ読みやすさといった部分を脚本で再現しているのかと思うけれど、原作のワンシーン・ワンシーンを切り貼りしているような印象。原作における地の文(もともと多くはなかったと思うが)で語られている部分がごっそり抜け落ちているような印象なので、もう少し「国籍」「在日」といった部分を強調するような描写があってもよかった。特に在日の親友が不慮の事故で亡くなるくだりはその後の葬式の部分も含めてやけにあっさりしていて不思議なほどだった。こういう部分がしっかりキムチ味なほど濃くなくては「GO」ではない。少なくともワタシには。(宮藤官九郎は同じく脚本を担当した「ピンポン」でもシーンの切り貼り脚本を書いているので、もしかしたら別メディアでの原作付には向かないのかもしれない。確信はなし。)

■又、山崎努や大竹しのぶといった芸達者がいつもと変わらぬ熱演をすればするほど、他のポップ且つクール且つライトなシーン(意味不明。特に窪塚が喋るシーンのことを指す)との温度の差は広がるばかり。個人的にはその温度差・ギャップは面白かったが。

■結局のところ行定勲監督が、原作のポップな青春小説という部分をクローズアップして撮った作品なのだろう。というわけで観やすいけれども物足りない印象の作品。個人的にはただ窪塚のピースな演技が苦手だったりする。
(01272004)
# by parttime_killer | 2007-09-02 11:23 | 映画アルファベット

「リプレイスメント・キラー」(1998年/米)

監督:アントア・フークア


■時間の無駄だった。チョウ・ユンファ扮する殺し屋とミラ・ソルヴィーノ扮する書類偽造屋が中国人マフィアから追われて、ぶち切れてやり返す話。クライマックスの銃撃戦も唐突に始まり、唐突に終ってしまうのでまったく盛り上がらない脱糞映画。とにかくストーリーが小学生レベルの話なのでダメ、アクションもダメ、ミラのお色気もなし、そのうえ小さくまとまっていて笑えもしないという駄作。時間の無駄無駄無駄。

■こういうのMTV感覚な映像っていうのかね~。なんかスクリーン上に弾薬は撒き散らしているけれど迫力がまったくないのだな。弾丸が命中すると即命を落とすという恐怖感や緊張感が欠けているので、まったく銃撃戦という感じがしない。

■登場人物の描写もダメダメで、皆さん裏社会のプロであるはずなのにまったくそう見えない。ミラの書類偽造屋の仕事振りなんてパスポートの写真を張り替えているだけに見えたし、スローモーション演出で鳴り物入りで登場するヒットマン・コンビはゲーセンでマシンガン乱射するだけで、それなら素人でもいいんじゃないかと思ってしまったし(しかも弱くて後半ザコキャラ同然にやられる)、そもそも劇中で「大物」といわれている敵のボスがなんで大物なのか、どれだけ悪い奴なのか描かれていないのでただのアジア系のおっさんに見えてしまった。もう少し頭使って欲しいところ。

■クライマックスのボスとの対決もダメダメで、お互いタマ切れになってマガジン交換が速いほうが勝つというダメっぷり。あれだけ二丁拳銃で打ちまくった後にマガジン交換勝負を見せられてもな。ここだけはバカバカ過ぎて思わず笑ってしまったけど。ジョン・ウー(製作総指揮)お得意の男同士の濃ーい友情もなく非常にうすーい作品。90分弱という時間の短さだけが救い。以上

(02022004)
# by parttime_killer | 2007-09-02 11:22 | 映画ら行

「イノセンス」(2004年/日本)

監督:押井守


■近日公開される話題作。公開前なので基本的にネタバレしないように感想を書いてみる。それでも多少の情報は漏れてしまっていると思うので、劇場に白紙の状態で見に行きたい方は読まないがほうがよし。ここまでが注意。

■基本的な話は、少女型家庭用ロボットが暴走して人間を惨殺する事件が発生し、その捜査を公安九課(攻殻機動隊)のバトーとトグサが担当、真相に迫っていくというもの。その事件を追う課程と「作り物である人形にゴースト=魂は宿るのか?」「人間はなぜ自らに形を似せた人形を作るのか?」「そしてそれにゴーストが宿るのならそれは人間ではないのか?となると人間とは何?」という問いかけが乗せられるという構造の話。

■まず映像(とその情報量)はちょっと凄いことになっている。アニメでここまで精巧な画を作り上げられるものなのか、と感心してしまうほどだ。実写では捉えられないような細部まで描かれていて、かえってアニメであることを意識してしまったのは、ひねくれた私特有の見方なのかもしれない。

■物語に着目すると、劇中、難解な台詞、意味不明な台詞、古詩・漢詩の引用が大量に登場するので、それ自体も難解な印象をもってしまいがちだが、語られる事件の発覚→捜査→解決というストーリーは、OVA「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」の各エピソードの番外編のようでわかりやすく単純なものだ。ただストーリーと「人間とは何か?」というテーマがうまくリンクしていないので、先述の難解な部分が難解なままで放置されていく。言い換えれば物語が進むにつれて、そうした難解な箇所が説明もしくは解明されていくようなつくりにはなっていない。テレビブロス(3月6日号)で、監督自身が観客の理解力を気にすることなく、説明なしで情報をぶちこんである旨の発言をしているので、そういった難解な情報は各自取捨選択して楽しむ作品なのだろう。ただ、そうした難解な情報の氾濫を別にしても、主人公バトーが事件の真相を追う行為が、人形のゴースト=魂を探求する行為--そしてそれは全身サイボーグ化したバトーにとっては、自己探求であり、前作のラストで肉体を捨ててゴーストだけの存在になった「少佐」(草薙素子)探しである--になっていくのだが、それがうまく脚本としてまとめられていないと思った。テーマとストーリーがリンクしていない印象。先述の難解な情報を解き明かしていけば、テーマとストーリーの間のギャップは埋まるのかもしれないけれど。

■そして「イノセンス」は押井版の「ブレードランナー」だと思う。「イノセンス」と「ブレードランナー」冒頭の、未来都市を上空から俯瞰するような映像や雑然とした東洋趣向の未来都市といった映像は、姉妹編といってもいいほどであるし、物語の語り口もハードボイルド調で(ノワール調ではなく)自己探求をする刑事の話であるし、何よりも「ブレードランナー」は人造人間レプリカントの生についての物語だ。人間のために精巧に作られたレプリカントが必死に生きていこうとする話で、「イノセンス」と同様、人形の魂の話である。異なる点は魂=ゴーストという概念が「ブレードランナー」には欠けていることだ。「ブレードランナー」におけるレプリカントの反乱は、デッカードの銃で鎮圧されてしまうが、「イノセンス」では人形の反乱のあとも、その人形のゴースト=魂について語られる点が大きく異なるけれども。

■何度も述べているように情報量が半端でないので、もう一度時間があれば観たい。DVD化されたら細かくチェックしてやろうかねえ。ただ、少佐(草薙素子)探しの話でありながら、少佐に関しての説明は一切登場しないので前作「GHOST IN THE SHELL」を観ていないと苦しいと思われる。多少脚本が整理されていない印象はあるものの、見る価値のある作品です。万人に受けるとは思えないが。やべーネタバレしまくりだ。以上(03042004)
# by parttime_killer | 2007-09-02 11:21 | 映画あ行